【祝婚歌】

【祝婚歌】

成田市で朗読士として、アナウンサーとして、司会者として、そして「おもてなし英語 in Narita」でナレーターとして大活躍されている、安永暁海(あけみ)さんからご紹介いただいた詩人・吉野弘さんの「祝婚歌」という詩をご紹介します。
吉野さんは、2014年(享年87歳)にお亡くなりになっています。
祝婚歌(吉野弘)
2人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは 長持ちしないことだと 気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
2人のうちどちらかが ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても 非難できる資格が
自分にあったかどうか あとで 疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか 正しくありたいとかいう
無理な緊張には 色目をつかわず ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる そんな日があってもいい
そして なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても 2人にはわかるのであってほしい

“いまを生きる”言葉 ~詩人・吉野弘の世界~ – NHK クローズアップ現代 全記録